FP1級を目指したいけど、取得のルートが複雑でよくわからない。FPとしての実務経験がないのだけど、FP1級になれる方法はないかな?
この記事では、こんな悩みを解決します。
ファイナンシャルプランナーの資格には以下の2種類があります。
- ファインナンシャルプランニング技能士(国家資格)
- AFP(民間資格)あるいはCFP(国際資格)
国家資格であるファイナンシャルプランニング技能士の最上級の資格が、「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(以下、FP1級)」です。FP1級の取得ルートは複数あり、実務経験が必要だったり、面接が必要だったりと、選択するルートによって難易度や試験内容が大きく異なります。
そこでこのコラムでは「実務経験なしでFP1級になる方法」について詳しく解説します。
目次
FPの試験制度
FPの試験には国家資格であるFP技能士試験(3級から1級)と、民間資格であるAFP・CFPがあります。それぞれ別の試験ですが、難易度別に対応させると、
FP2級 = AFP
FP1級 = CFP
となります。
国家資格であるFP技能士試験は、「金融財政事情研究会(以下、金財)」と「日本FP協会(以下、FP協会)」の2つの団体が実施しています。FP3級とFP2級は学科試験と実技試験がありますが、学科試験については金財とFP協会で同一の問題が出題されます。
またどちらの団体の試験に合格しても、等しく「3級ファイナンシャル・プランニング技能士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」と名乗ることができます。FP技能士は一度合格すれば、一生有効となる資格です。更新などは必要ありません。
一方、AFP及びCFPは日本FP協会でのみ実施されている試験です。試験といってもAFPは通信教育による研修を受けて合格することで認められる資格となっています。AFPは登録後、2年おきに更新が必要です。
CFPは年2回実施されている「CFP資格審査試験」に合格し、一定の研修を受講するか、3年以上のFPに関する実務経験を有することで、CFPに登録できます。CFPも登録後に2年おきの更新が必要です。
このようにAFP及びCFPは登録後の更新を必須としているため、より実務的な資格であるといえるでしょう。
FPの実務経験とは
FPの試験や受験条件として、実務経験が求められることがあります。FP2級の場合は、通算で2年以上の実務経験、FP1級の学科試験では、通算で5年以上の実務経験、あるいはFP2級の合格に加えて1年以上の実務経験です。
FPの実務経験は合算できます。連続して勤務していなくても問題ありません。たとえば1年間、銀行で働いてから退職し、それから数年後に別の銀行で1年間勤務した場合、通算で2年間の実務経験として認められます。
また勤務形態も正社員だけでなく、派遣や嘱託、アルバイト、パート、フリーランスなど職務内容がふさわしければ、FPとしての実務経験として認められます。
受験条件としての実務経験は自己申告制ですが、虚偽・不正があった場合は、合格が取り消しになることもあります。
具体的な実務経験の例は以下の通りです。
- 銀行、保険会社、証券会社、クレジット会社等の金融機関に勤務している方
- 保険会社の代理店の職員
- 税理士、公認会計士、不動産鑑定士、宅地建物取引士、社会保険労務士、中小企業診断士、弁護士、司法書士、行政書士などで資産に関する相談業務に従事している方
- 会計事務所の職員
- 不動産会社、建設会社など土地建物の取引・建築・相談業務に従事している方
- 投資顧問会社の職員
- 生活協同組合などの共済等担当職員
- 商品先物取引会社の職員
- 一般事業会社および官公庁の福利厚生担当者および金融・財務・経理担当者
- 商事会社の商社金融担当者、商事会社やコンピュータ会社等の金融機関営業担当者および金融機関向けソフト開発担当者
上記の具体例から実務経験として認められる業務はかなり幅広いことがわかります。銀行や保険会社の社員だけでなく、生協の職員や士業の業務もFPの実務経験として認められます。
FP1級を取得する方法
FP1級を目指すルートは、いくつかあり前提条件や試験内容によって大きく異なります。図にすると以下のようになります。
FP3級・FP2級では合格の条件として、学科試験及び実技試験の両方の合格が条件でした。しかしFP1級では図からもわかるように、金財あるいはFP協会の「実技試験」のみの合格でFP1級と認められます。
大きく分けると以下の2つになります。
- 金財ルート(実務経験必要ルート)
- 日本FP協会ルート(実務経験不要ルート)
それではまず、金財ルートから見ていきましょう。
金財ルート(実務経験必要ルート)
金財ルートは実務経験が必要なルートです。金財が主催するFP1級学科試験と実技試験に合格してFP1級と認められます。
金財ルートのFP1級学科試験には以下の受験資格が要求されています。
- 2級技能検定合格者で、FP業務に関し1年以上の実務経験を有する者
- FP業務に関し5年以上の実務経験を有する者
受験資格として要求されている実務経験を満たさない場合、金財ルートのFP1級学科試験は受験できないので注意してください。
金財のFP1級学科試験に合格したら、次は実技試験です。学科試験で金財を選択した場合でも、金財の実技試験だけでなくFP協会の実技試験も選択できます。
金財のFP1級実技試験は面接です。ペーパーテストではないので注意が必要です。
そして金財のFP1級実技試験に合格すると、めでたく1級FP技能士として認められます。
日本FP協会ルート(実務経験不要ルート)
FP協会ルートは実務経験を必要としないルートです。具体的には以下の順で試験を進めます。
- AFP認定研修
- CFP試験合格
- FP1級実技試験(金財あるいはFP協会)合格
金財のFP1級には実務経験が必要だから、実務経験を必要としないAFPやCFPに合格して、FP1級実技試験を受験するというルートになります。
またFP協会ルートを選択することで、CFPも取得できます。名刺や履歴書に1級FP技能士だけでなく、CFPも記載したい人は、こちらのFP協会ルートを選択すると良いでしょう。
CFPはFP1級実技試験の受験資格となりますが、CFPには受験資格として以下の2つがあります。
- CFP認定者
- CFP資格審査試験の合格者
この「CFP認定者」と「CFP資格審査試験の合格者」の違いはどのようなものでしょうか。詳しく見ていきましょう。
FP1級実技試験のためだけなら「CFP資格審査試験の合格者」で足りる
FP協会ルートでFP1級を目指す場合、CFP試験に合格する必要があります。CFP資格審査試験は以下の6つの科目から構成されています。
1日目 | 2日目 |
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金融資産運用設計 | リスクと保険 |
不動産運用設計 | タックスプランニング |
ライフプランニング・リタイアメントプランニング | 相続・事業承継設計 |
この6科目全てに合格することで、CFP資格審査試験合格者となります。
しかしCFP認定者となるためには、試験に合格するだけでなく、合格後に以下の2つの条件を満たす必要があります。
- CFPエントリー研修の受講・終了
- 通算で3年以上の実務経験がある
CFP認定者になるためには、上記2つの条件が必要です。
しかしFP1級実技試験の受験条件は「CFP認定者」に加えて「CFP資格審査試験の合格者」も含まれます。
後者の「CFP資格審査試験の合格者」とはCFP資格審査試験の合格日から、翌々年度末まで有効と認められるCFP資格審査試験の合格者です。
つまり実務経験がない場合、CFP資格審査試験に合格して2年以内にFP1級実技試験に合格して1級FP技能士となり、CFP認定者にはならない、という選択も可能です。
これはCFP試験を完全にFP1級実技試験受験のための条件として使うだけの方法です。このような形でFP1級だけを目指すことができるのが、FP協会ルートです。
ただし、CFP試験を受験するためには、AFP認定者となっていることが条件です。AFP認定者になるにはAFP認定研修の受講が必須です。AFP認定研修については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
FP1級の実技試験対策
日本FP協会ルートでFP1級を目指すとして、CFP試験に合格後にFP1級の実技試験を受験し合格しなければなりません。FP1級の実技試験には金財ルートと日本FP協会ルートの2つがありますが、
日本FP協会のFP1級の実技試験の方が、試験は圧倒的に簡単です!
というのも、金財のFP1級実技試験は面接形式でSNSの投稿なんか見ると圧迫面接だったという感想も見受けられます。
一方、日本FP協会のFP1級実技試験は記述式です。なんでとにかくFP1級になりたい人は、日本FP協会のFP1級実技試験を受験するのがおすすめです。
ただ市販されている日本FP協会ルートのFP1級実技試験対策の書籍は1つしか販売されていません。
これだけなんですが、正直、試験内容がめちゃめちゃ簡単なので、この1冊を繰り返せば十分です。おそらくCFP試験に合格できる方なら、ほぼ無勉で合格できるかもしれませんね。
FP3級からFP1級までに必要な費用
最後にFP3級からFP1級になるまでの必要な費用をまとめました。
FP3級の受験料 | |
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学科試験 | 3,000円 |
実技試験 | 3,000円 |
合計 | 6,000円 |
FP2級の受験料 | |
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学科試験 | 4,200円 |
実技試験 | 4,500円 |
合計 | 8,700円 |
FP1級(金財)の受験料 | |
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学科試験 | 8,900円 |
実技試験 | 25,000円 |
合計 | 34,900円 |
FP1級(FP協会)の受験料 | |
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実技試験 | 20,000円 |
AFP認定研修の手数料 | |
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学校によって異なります | 10,000円~30,000円程度 |
CFPの受験料 | |
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1課目 | 5,500円 |
2課目 | 9,900円 |
3課目 | 14,300円 |
4課目 | 18,700円 |
5課目 | 23,100円 |
6課目 | 27,500円 |
実務経験で迷ったら問い合わせよう
先ほど紹介したように、FPとして認められる実務経験にはかなり幅があります。自分がこれまでやってきた仕事が実務経験として認められるかどうか迷ったら、金財あるいはFP協会に問い合わせて、確認することをお勧めします。
FPの実務経験は自己宣告制なので、試験に申し込む時に実務経験を証明する書類などを提出する必要はありません。しかし虚偽や不正な申告をしてしまうと、せっかく試験に合格しても取り消されてしまうこともあります。
インターネットで検索してみると、様々なケースがFPの実務経験として認められていることがわかります。しかし自分で正しく判断することは難しいでしょう。実務経験で迷ったら問い合わせてみるというのが、正しい方法です。
実務経験がなければ
「CFP試験に合格してからFP協会のFP1級実技試験に合格する」
これがFP1級の有資格者になる最も確実な方法です。